龍龍
.*゚
†人形依存





少女は、動かない

虚ろな目を男へ向けるだけ。




大量に浮かぶ蝋燭(ろうそく)の明かりと鈴の音だけが響く暗い空間。


男は



九角天童は




少女へと語りかける。





「葵、今日は、夢を見たんだ」




天童は組んでいた手を崩し右手で葵の頬を撫でる。しかし葵は黙ったまま光の無い濁った瞳を天童に向けるだけ。

「…」


それでも天童は構わず続ける



「そんな怖い顔をするなよ………


……夢に、かあさまが出てきたんだ

でも…何も言わない…
そして俺の目の前で倉に首を吊って死んでしまう…」




頬から肩、背中…と手を移動させ葵の腰を強引に引き寄せる
天童の術にかけられている彼女は抵抗の意思すら見せることはない

右手を腰、左手を彼女の髪に当て指を絡ませて遊ぶ。




まるで割れ物を扱うかのようにゆっくりと優しく、



首筋に頬擦りする

そして誰かをすがる様に両手を葵に回し抱き寄せる




「お前は…………葵は、
いなくならないだろう?
俺の前から消えないだろう?」



まるで母に甘える子供のように。





葵の胸に顔を埋める

「お前は、かあさまの分まで生きろ…俺の側で……」



そして腰に回していた右手を自分の腰に移動させ、さしてあった小刀を、彼女の襟から着物の中に滑り込ませ胸に入れる。


「菩薩眼としてじゃない………
葵が…欲しかったんだ
前からずっと。だがお前はあの糞共と行動を共にし守られていた

憎かった、だから皆殺しにしてからお前を奪おうとした、だが…………」


天童は暖かな笑みを浮かべた。

「お前は…………自分から俺の元へ来てくれただろう?
己の足で、意思で」








キ―――――ン…と光を反射した耳飾りが音を立てる。





「嬉しかったんだ…」





その顔は、欲しかったおもちゃを待って待って待ってやっと手に入れて喜びはしゃぐような、そんな表情。










(かわいそうな、ひと)




人形依存










end.

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