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換骨奪胎1
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風雨が体を叩きつける
ぐしゃぐしゃで濡れた頬は雨か涙かなんて分からなかった
ただその場に居続けるのは耐えられなかったからひたすら走った





「ソウルの、馬鹿野郎…」











「…またケンカしたのかよ」
「うるせぇな。ブラックスターには関係ないだろ」
「まぁ詳しいことは知らねーけど、追いかけなくていいのか?」
「………。あんな奴しらねーよ…」












私がおかしくなってたのかもしれない

ほんの些細なことから魂の波長がズレたのを、全てソウルのせいにした。全部ソウルの黒血のせいだって。

でも今思えば、私だって狂気に堕ちかけていたのかもしれない。退魔の波長だって所詮感情の波にはのまれてしまう。
私が、支えてあげられればよかった。
そもそもソウルの胸に傷を負わせてしまったのは私の責任だし黒血だって彼の望んだことではなかったのに


一度自己嫌悪に陥ると、一気に体が重くなった。走ることも辛くなって、ずっしりと嫌な重さを増した心を支えるのに必死になる。
(馬鹿なのはソウルじゃなくて私の方だ…)





頭を冷やそう、そう思い近くの廃屋に飛び込んだ。







一人になったのは間違いだった。余計に隣が寂しく思えて苦しくなる。嗚咽が酷くなり呼吸困難になりかけた。




角でうずくまってただただ泣いていた。ソウルに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、自分はどうすればいいのか分からない。

あの時アイツは
気にするな、って言ってた
あれは私を気遣った言葉だった。なのに私はアイツを傷付けてしまったかもしれない



「黒血、か……」
(私にも流れてたら、ソウルの気持ちを分かってあげられたのかな)





辺りに散らばっていたガラスの破片を手に取ると、自分の腕に突き刺した。

零れる赤い血

…だからこそ、私が支えてあげなきゃいけないのに

「…よし、謝ってこようかな」

いつまでもウジウジしているのは私らしくない。ガラスの破片を壁に投げつけ、砕ける音を聴くと私は立ち上がった。




と同時におぞましい程の狂気の波長が一瞬思考を停止させた。

いつの間にか首に絡まる幾重のマフラー。額に冷や汗が滲む



「誰だ!」






「…まさか、そんな」



それは、ガラスが割れる音にビビって出てきた鬼神だった

偶然にもここは鬼神の潜伏場所の様だった。




「お前、俺を殺しにきたのか!」

私の前に姿を現した鬼神は、がくがくと震えていた。
殺されると思い目をきゅっと瞑るがいつまで待ってもその時はこなかった。

「…殺さないの?」
「………」

彼の目は酷く怯えていた。ブツブツと何か喋っているけどはっきりと聞こえない。恐らく、独り言。

これがあの、鬼神。デスシティを恐怖に陥れ世界に狂気を振り撒き続けるあの鬼神…。

怒りが込み上げてくる。
散々迷惑をかけておいて自分はこそこそと隠れ逃げて…

私は思いっきりマフラーを引っ張り手繰り寄せた。




「私にビクビクすんな!」



驚く鬼神。
しんと静まり返る室内。

鬼神は口をぱくぱくさせていたが、やっとのことで声を出した。






「なんだと、女…」




ピリリとした空気がその場を支配し始める




「私はマカ=アルバーン」



ぐいと胸ぐらを掴んでやったら鬼神はよろめいた。

だがその手は弾かれ腕を捕まれた。そしてさっきガラスの破片で付けた傷に指を突っ込まれ抉られた。

痛さに声が出ない。





「欲しいのだろう?」





すると鬼神は自分の腕を同じように切り付け溢れた黒血を私の腕の傷へと注いでいく。




「お前は俺を見てしまった」



突然の耳鳴りに、歪む視界






「死武専の人間か?」




「死神に告げるのだろう?」



「俺の存在を。お前を逃がす訳にはいかない」



異常に脈打つ心臓。



頭がふらふらする



鬼神が何か言っていたけどもうよく分からない。

私の意識はそこで途切れた。







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