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□I can't escape this love.
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「生殺しだな」
「あぁ…かじりてぇ」
「舐めたい」



ムキムキした狼、赤みがかかった狼、笑顔狼がこちらにギラギラとした視線を寄越している
…命の危険を感じずにはいられなかった




隙を見て逃げ出そうかと逃走計画を練っていると見覚えのある狼が勢いよく飛び込んできた

(あの時私を狩ろうとしてた狼だ)

確かこの幼さの残る明るそうな狼に追いかけられたんだった

この狼も私のことを美味そうとか言ってくるのではとビクビクしていると、明るそうな狼が私の目の前にどこから摘んできたのか両手いっぱいに草を差し出してきた。


どれも鮮やかな色で変わった形の葉ばかりだ



どうすればいいか分からずあたふたしていると狼がニカッと笑い尾を揺らす

「食えよ。昨日から何も腹に入れてねーんだろ?」

「…でも」

「いいから遠慮すんなって!これから一緒に暮らしていくんだし!」

するとムキムキ狼が明るい狼を小突く


「んな優しいこと言っときながらぶくぶく太らせて美味しくいただこうって魂胆はバレバレだぜ平助よぉ!」

「なっ!ちげーよ!俺は純粋な好意で…」


とにかく食えよ!と促されてとりあえず一枚葉っぱを摘まんでみるけど…


「…ありがとうございます」




けして私は遠慮して、でもでもと言っていた訳ではない

食べないとわざわざ摘みに行ってくれた彼に悪いとは思うのだけれど…



(これほとんど毒草だ…)


食べたフリをしようかと悩んでいるといつの間にか笑顔狼が後ろから草を覗きこんでいた


(もしかして、この方の好物なのかな)



「あの…、食べます…?」

物欲しそうな目でこちらを見ているので声をかけると、いきなり笑顔狼に後ろから抱きしめられた。



ニコニコしている!
心臓が跳ね上がり恐怖で身体が動かない
狼の割に軟らかい毛並みがくすぐったいなー…なんてどうでもいいことを考えて恐怖を和らげようとするけど、余計に狼のことを意識してしまい逆効果だ。


ふわりと尻尾の先で顎をなぞられた


「え、いいの?嬉しいなぁ」

そう言ってかぷり

「きゃあ!」


耳を噛まれました
この方は草ではなく最初から私をいただきたかったようです
ここで私の人生は終わるみたいです

「ん―――いい匂い」

「総司!つまみ食いはナシだっつったじゃん!」

「俺にも味見させろーっ!」

「新八は我慢できなくなってそいつ丸ごと食っちまいそうだから駄目だ。ここは俺に譲ってだな…」

「左之はもう一匹の方食いに行けばいいじゃねぇか!俺ぁこの嬢ちゃんに用がある!」

「ああもう煩いな君たち」







ふらり


遠退く意識の中で狼たちがぎゃあぎゃあ騒いでいるのがぼんやりと見える。毒草を食べて死ぬのと狼に食べられて死ぬのもどちらも嫌だしどうせなら意識の無い間にばくりと…

そう頭の中で考えていると急に鳴り響いた怒鳴り声で意識が引き戻された


「総司!
過度の接触は禁止の筈だ。…あんたらはもう少し自重しろ」



場を収めたのは大人しそうな狼だった
それまで騒いでいた狼たちは皆、げ、とマズそうな表情で大人しそうな狼と私を交互に見る。


「顔が真っ青だが…総司に何かされたのか?」


「えっと………」


声をかけられ反応に困る。どっちみちこの狼も私を食べようと考えているのだろうし、正直に「食べられかけました」なんて言ったところで現状が変わるのだろうか…
私が黙っていると横から明るそうな狼が「そうなんだよ!」と大きな声で訴えた

「一くんがなんとか言ってやってくれよ!総司がそいつのこと味見し…」

だけどその訴えは「お前も同罪だ」と一蹴された。

一応、親切にしてもらった訳だしちょっと可哀想に見えてきたので「私は大丈夫ですから気にしないで下さい」とフォローを入れる
すると明るそうな狼は驚いた様子で目を見開いた

大人しそうな狼はそうかと短く返した後、「次このような騒ぎがあれば副長に報告する」と他の狼たちに注意しくるりと私に目線を向けた。

ついてこいと言われているみたいだ




明るそうな狼に手伝ってもらい笑顔の狼から解放されると、大人しそうな狼が私に向けて、あるいはこの場の狼たちに確認するように一言。



「逃げようとは思うな」




………逃がさない、ということなのだろう
その言葉は私にとてもとても重たくのし掛かった





「まぁ仲良くしていこうな?」



赤みのかかった狼が困った様に笑うが、その笑顔が怖くて仕方ない。
だって狼だから

食べないって言っていたけれどそれも信用性があるものではなかったし、いつ食べられるか分からないこんな状況で「逃げられない」と悟ってしまえばそれは絶望でしかない。













私は副長と呼ばれる目付きの悪い狼のところへ連れていかれるらしい






叱られてしょんぼりとした狼たちがぞろぞろとついてくる。
その様はなんだか可笑しな光景だった


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