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□flyleaf

もし神様が再びチャンスをくれるのなら、次に生まれる時は千鶴の側にいてやりたい、守りたい…やり直すことができたらって思っていた

そして、長いようで短い間時間を経てようやく再び出会いが巡ってきたのだ



「薫…どうしてこんなになるまで…」

千鶴は俺の背中にそっと手を回した
悲しげな瞳を伏せ胸元に顔を埋め肩を小刻みに揺らしている



再度双子として産まれることができた俺たちだが家庭の事情というやつで小さい頃に引き離された
それから一変した毎日だった。毎日のように浴びせられる罵倒と繰り返される折檻
前世の記憶がフラッシュバックする度に拳を握り締めた

ここで潰れる訳にはいかない。せっかくまた逢えたんだ、俺が千鶴を迎えに行かなくてはと言い聞かせて自分を保ってきた

勿論、今は鬼ではないのだから傷がすぐに治るわけじゃない。
身体には日々与えられる苦痛が蓄積されていった



曝け出された上半身に千鶴は目を見開き息を止めた



無理もない。
千鶴は優しいから人の痛みまで自分のことのように受け取ってしまう。


一緒に傷ついてくれる

でも、今は同じ時間を共有できている
千鶴と同じ時間を生きている。その事実だけで嬉しい



「ちょっと、ぶつかって」

「嘘」

俺が困ったように笑ってみせると千鶴はさらに俺を抱き締める腕に力を込めた


「なんで笑うの?…辛い思いしてきたんでしょう?」

その大きな瞳から一滴が頬を伝った。汚れを知らない透き通った涙。綺麗だなあなんて考えながら指ですくうとそれは床にぽたりと落ちた


「俺はね、千鶴」

千鶴の顎を持ち上げて顔を上げさせる


「昔は散々やってきたけど、やっぱり一番はお前だった。そしてもう一度産まれてくることができて、家を飛び出して今こうやってまた会うことができたんだ。随分待たせたけど、俺はお前と幸せになりたい。それじゃ駄目?」



前世では酷いことも幾度となくしたし泣かせてばかりだったけど、やり直しがきくなら




「ううん。幸せに、なろう。なっていいんだよ。あの時叶わなかったことをこれから叶えていこう」

一緒に泣いたり笑い合ったり、食事したり、遊んだり、出掛けたり

叶わなかった「普通」を叶えていこう


「薫。一緒に暮らそう?
戻ったらまた酷いことされるんでしょう?」

「…うん。ありがとう」




世間が言う神様なんてものを信じたことはないけど、いないと思ったことはない。

必然だとか偶然だとかいう言葉を耳にするけれど、何故かぱっとしない。

俺たちの出会いが運命の巡り合わせだというのならそれらの言葉が当てはまらない気がして
流れに身を任せるというよりは自ら流れに乗った感じがしてならない

神様とやらに礼はしない
だって幸せになるのはこれからだから
俺のひねくれた性格上
礼を言うのは生を全うする時だろう


それでも、千鶴を与えてくれた世界には感謝しきれない


戦の無い平和な世に生まれて、こうしてやってきたチャンスを無下にするような真似はしたくない




千鶴

今度こそは必ず
互いが幸せだと思う道を進もう



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