並んで歩く二人がとてもお似合いできらきら輝いて見えたから 私の中の黒い心が暴れだしてむちゃくちゃにしてやりたいと叫んだ 私の、歳三さんなのに そう声をあげることは叶わなかった。だってそうでしょう?本当はもう自分が入る隙間が無いことなんて分かりきっているしそんなことしたってはたから見れば可哀想な悲劇のヒロインで終わりだ 歳三さんの幸せを願う反面私のどす黒い感情は笑みを浮かべ、あの女の目の前で歳三さんの唇を奪った だって歳三さんが私のことなんてただの子供としか見てくれないから。本当はずっとずっと昔から貴方のことを見てきたのに。寄り添ってきたのに いつの間にかこんな独占欲の塊みたいになってしまった私をいっそのこと「我儘な女だ」と殴ってその場から去ってしまえばよかったのにあの人は一言、すまないと頭を下げただけだった 傷付いたのは私よりも歳三さん。傷付けたのは私。 本当は、記憶の無いあの人に私のことを思い出してもらいたかった。だけどあの時の私は目の前の事実にしか目に見えていなかった。だからこんな結果になってしまったんでしょう。幸せになって下さい歳三さん 「君自分が何したか分かってる?」 「はい」 「あの人結婚するんだよ」 「私知ってます。だから歳三さんを困らせたんです」 「可哀想な子だね」 「それでもいいんです」 事実を言われただけなのにこんなにも苦しい。だけど涙は出ない。こんなときに「本当は辛いんです」と泣き喚けたらどれだけ楽か 「お説教しにきた訳じゃないんだけど。君が何日も学校休むから僕が土方さんに様子見に来させられたんじゃない。あの人もあの人だよ、気になるなら自分が行けばいいのに。本当君たちって不器用だよね」 いやに落ち着いている私を冷たく見下ろしながら沖田さんはネクタイを緩め私の横たわるベッドに体重を乗せた。 ぎしりとスプリングが軋む 「犬猫じゃないんだよ。誰にでもそうやって肌を許すわけ」 「いいんです」 こんな醜い私は汚れるのが相応しい 「壊して下さい」 「僕でいいの?」 「ごめんなさい」 私みたいな女で あの人のことを思い出せなくなるほど狂ってしまえたら私の醜さを覚えてしまった心は救われるのでしょうか。そう望んでいるのに空っぽになったビーカが水はまだかと煩い。身体で満たされるのなら私を原型が留まらないくらいにぐちゃぐちゃに壊して満たされて下さい 「そーゆうこと言ってる訳じゃないんですけど。あーもう面倒くさいなぁ」 沖田さんの体重が私の腿に集中する。 「僕が女なら誰それ構わず抱くとでも思ってた?」 ぐるぐる 私の思考回路はおかしいのかな 「私馬鹿ですよね。でももう全部どうでもよくなってきちゃって」 沖田さんが苛々している。私が中身の無い噛み合わない会話を続けているからだろうか だけど沖田さんはにやりと不敵な笑みを浮かべた 「君のそーいうとこ嫌い。だけど土方さんにとられなくてよかったって思ってる」 そう言って言葉とは正反対のことをする。私のぱさついた唇を強引にこじ開け渇き気味の口内を蹂躙していく 「そういえば喉がカラカラでした」 「いいよ。続きしよっか」 (君って頭悪いね) 私はあの人のいない喪失感の分を傷付けて狂わせて満たしてほしいだけ 僕はあの人に捨てられた君を傷付けるフリをして愛したいだけ 「ねぇ、気付いてよ」 あれ? またどこかに置いてきぼり ものわかりのわるいおんな .