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□I can't escape this love.
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足がもつれて思うように走れない。段々と息が上がるにつれて相手の数が増えている

私が力尽きるのを待って一気に襲いかかるか、挟み撃ちで連携してかかってくるか



「お腹すいたなぁ」

「もーちっとだから我慢しろよ」

狼たちの恐ろしい会話が耳に入る



逃げなきゃ。捕まったら終わりだ。
怖くて怖くて視界が涙でぼやけているけどここで泣いている場合ではない!


ところが、いつの間にか追いこまれていて目前で森は開けていた




「きゃあ!」


逃げられない、そう覚悟した瞬間だった
小石につまずき体が中を飛ぶ。目前には崖。体が前のめりになり急ブレーキをかけることができない



(私死んじゃうの――!?)


全身を強い衝撃が走りそこで意識は途切れた
















「目が覚めたか」



岩穴は薄暗く、そこには私を監視する二匹の狼がいた。
大人しそうな狼と悪戯っぽい笑顔の狼。



「あの…あなた方は…?」


体を起こそうとすると全身に激痛が走る。それを見た狼が私に、優しいような哀れむような妖しいような曖昧な笑みを浮かべた


「君、崖から転げ落ちちゃたんだよ。生きてることが奇跡なのに今から食べられちゃうなんて相当運がないよね」


可愛そうに…と悲しそうな表情をしているけどどうもこの狼は信用できそうにない
一方で大人しそうな狼はじっと私を見ているだけだったがふいに言葉を発した。


「それでは行くか」


突然抱き上げられ、恐怖心で体が固まってしまう。そんな私を見てやっぱり狼は曖昧に笑うのだった











それは絶望的な光景だった
…4匹の狼が私を待っていた
てっきりあの二匹の狼に食べられると思っていたのに…まさかの6匹。




「そいつが例の?可愛いウサギちゃんじゃねーか」

「新ぱっつぁん鼻の下伸ばすなよ…」

「俺は腹が減って仕方ねぇぜ…」

「早く食べちゃいましょうよー」

「あんたは副長の話をちゃんと聞いていたのか?」



みんな、冗談言い合いながらお食事のことを話している…
それが余計に怖かった。大きな岩に腰を下ろし黙ってこちらを伺っている狼はずっと私を睨んでいるし
それにしてもこの数の狼に食べられるとなると恐ろしい

生きたまま体を裂かれて痛い思いをしながら食べられるに決まってる!…なんて考えただけで気絶しそうだ
私は意を決して大声を張り上げた




「どうせなら一思いに殺して下さい!」








しーん





ぱたりと会話が止み皆がこちらをガン見している。余計に立場を悪くしてしまっただろうか…とにかくもう泣きたかった。


するとずっと私を睨んでいた狼が腰を上げずんずんと向かってきた

今度こそ本当に殺される…!

死を覚悟した瞬間、その狼が私の喉元に牙を立てた


「ひぁぁっ!こっ…ころさないで…っ!」

「うるせぇ黙ってろ」






それは仲間同士でじゃれるような甘噛みだった
噛み千切られるかとひやひやしていたのにとんだ予想外の事態に思考が遅れる


「土方さん狡ーい」とぶいぶい横槍が入るが狼は気にも止めない
どう反応したらいいか分からずされるがままになっていると、狼とふいに目が合う

(どうしよう…)






「食わねぇよ」






「え?」







見つめられて冷や汗をかいていると狼は唐突にそう言いポイと私を投げ捨てた


訳が分からずその場で固まっていると先程の笑顔狼に後ろから耳元で囁かれた



「君食べられずに済んで良かったね。でも僕は残念だなぁ味見したかったのに」

「え?え?え?」


ますます意味が分からず頭上に?を浮かべていると大人しそうな狼が声をかけてきた


「今日から俺があんたの見張り役になる故」


「!!!?」



何故か私はこの狼の巣で生活していくことになるのだった



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