(もし、叶うのなら、次に生まれてこれたとしたらまた千鶴ちゃんに会いたい) (君以外を好きになるなんて有り得ないよ) 「あの日、僕の世界は一瞬止まった 桜の木の下で涙を流す君を見つけて、あぁ千鶴ちゃんだなって思ったんだ」 「それで入学式の次の日から、必要に私のクラスにふらりと来てはちょっかいを出して帰っていったと」 「うんそう」 僕がにこりと笑みを浮かべると千鶴ちゃんは唇を引きつらせた。 僕たちは付き合って4カ月。二人とも前世の記憶はある。 入学式の朝、珍しく遅刻をせずに校門を突破し、清々しい朝だなーなんて思いながら校内を散歩していると突然呼吸ができなくなった。鼻に何かが蓋をしたのだ。そのせいで酸素吸えなくってめちゃくちゃむせた。 それは桜の花弁で、ふと窓に目を向けるとその先に佇む桜の木の根元に人影が見えて。 何故か無性に気になって、入学式後桜の木に行ってみたら君がいて。僕と目が合って、ふわりと笑った君のあの時の表情は脳内に焼き付いて、死ぬまで忘れないだろうと思った。 「ほら、口開けて」 「いやです」 「いいから」 ポケットにたまたま入っていた飴玉の袋を破き中身を取り出す。 「あーんして」 「は、恥ずかしいです!」 ボッと千鶴ちゃんの顔が赤に染まる。この程度のことで恥ずかしいなんて言われたらその先に進めないじゃない。真っ赤な顔でそんなうるうるした瞳で見上げないでよ。扇情的すぎ。なんて可哀想な僕。 生殺しとはまさに千鶴ちゃんのためにある言葉だと思った 「そんな顔されたら意地悪したくなるじゃない」 「へ?」 飴を指ごと口に差し入れる。すると驚いた千鶴の舌が指に絡まって背筋にゾクリと電流のような刺激が走る。 これはやばい 「千鶴ちゃん、僕の指美味しい?なら今度は僕が千鶴ちゃんを食べる番だよね」 耳に軽く息を吹き掛けるとさらに千鶴ちゃんは頬を真っ赤に染め抵抗する。僕に対して文句を言っているのだろうけどもがもがと言葉になっていない声を発するだけ。 なんとか口内の異物を追い出そうと舌で押し返してくるのだけど逆効果! 僕のムラムラ度がMAXに達しそうになったまさにその時、千鶴ちゃんに起こった異変に気付く。 黙ってうつむいたまま微動だにしない。 じわり。 目尻にきらりと輝くそれは今にもその大きな瞳からこぼれ落ちそうだ。 「…千鶴ちゃん?」 指を引き抜き自分の口にぱくり。ふわりと広がるいちごの味。 「感動するほど僕の指美味しかった?」 わざとらしいそれに千鶴ちゃんは千切れんばかりに頭を左右に振った。 「そんな訳ないじゃないですか!沖田先輩の…意地悪!!」 そこからだった。 僕が何を言っても睨んでくるだけ。恐ろしいほどに無反応。 なんとか機嫌をとろうと、小さなカフェに引っ張って千鶴ちゃんの好きなケーキを1つ注目。 いつもなら目を輝かせながら礼の言葉を並べまくるというのに、 「……」 千鶴ちゃんは機嫌を治してくれない。 流石にちょっぴりイラッときて、食べないの、と聞くと千鶴ちゃんは一瞬怯んだ様子を見せたがすぐにいただきます、とフォークを持った。 あ、そこはちゃんと食べてくれるんだ。食べ物を粗末にしないところがなんとも君らしい。 店を出てしばらく歩いているとひゅう、と風が通り抜ける。隣にいたはずの彼女が僕の数メートル後ろで小さく咳き込んでいた。 「こほっ…こほっ、こほっ」 酷く辛そうな顔をして手で口元を覆っている。 思考が一時停止した。 フラッシュバックした光景。 あの時、僕を蝕んでいったあの病。 「今度は君が、置いていくの?」 口をついて出ていた言葉。 それからいてもたってもいられずその小さな体を己の腕の中に閉じ込めた。怖くなって、千鶴ちゃんの首筋に顔を埋める。今の自分が情けない顔をしているのは分かりきったことなので見られないようにするのが精一杯だ。 すると小動物はもぞもぞと動きだした。 「あ、あの、やっぱりこういうことは恥ずかしいです」 それとほぼ同時に彼女の咳が止まる。 もじもじ あれ?何かがへん。 恐る恐る顔を上げると照れながらも微笑む君と目が合う。 「そんな泣きそうな顔しないでください」 「…どーゆうこと?」 「…少し、意地悪しすぎちゃいましたか」 仕返しです、と千鶴ちゃんは笑った [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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