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□友情録@
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「はぁー…今日も冷えるなぁ…」


赤く悴んだ指先に息を吹き掛ける。


八木邸の門前をホウキではわくのは日課になった。
俺を駄犬だのなんだの罵ったあの人はもうこの世にはいない。
俺は何度目かも分からないため息をつきながら自分がここに留まり続ける理由を考えていた。























昨日からばたばたとやけに騒がしい。何事かと思い、すれ違った平助を引き留めて訳を聞くと案外すんなりと話してくれた。

「綱道さんの娘ってやつが昨晩土方さんたちに連れてこられたんだよ」

「なっ…それは本当か?」

「ああ、それで俺は今からそいつのとこに飯持って行かなきゃなんねーから…」



「なあそれ俺がついてったら駄目か?」

すると平助は目を丸くした

「駄目に決まってんだろ!そんなことしたら俺が土方さんになんて言われるか…」

とたんに平助は顔を青くしそそくさと広間の方へ逃げていってしまった




「……綱道さんの娘さん、か」


確かめたいことがあった。というか気にかかっていた。いつだったか、屯所に訪れた綱道さんを送る際、沈黙に耐えかねた俺が家族の話を振った時の綱道さんのあの読み取れない表情に…ずっと引っ掛かりを感じていたからだ



にしても気になる。あの綱道さんの娘さんだ。きっと表情が乏しかったり無口だったりどことなくあの人に似ているに違いない。

「禿げ頭…は流石にないよな?」









「おい犬、何を一人でニヤけているのだ。ついに頭が沸いたか」




「!?」




はっとして声のした方を振り向くがそこに人影は無い。というかそもそもあるはずがない


ははは…、とひとりでに乾いた笑いが溢れた。
自分が一番解っているはずなのにな。頭のどこかでは未だに受け入れられていないらしい。



「なんだかんだ言っても、そう簡単に忘れられるもんでもないしな…」



俺は気分を切り替えるため両頬を叩いて気合いを入れると、残っている洗濯物を洗うため袖をまくった。


「この時期の水仕事は辛いなー…溜め込む前に早めに洗っちまえばよかったよ…」




それから、山のような洗い物を片付けるため井戸へと向かった。
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