2/3p 起床してまだ間もなく、布団を片付けていると襖越しに声がかかった。 「井吹、頼まれごとしてくれねーか」 「土方さんか」 「すまねぇな、墨が切れたから買いに行ってもらえると助かるんだが」 「構わない。今日は特にすることもないしな」 近藤さんに届けて欲しい、と付け加えられる。早速支度を始めようとすると土方さんは素っ気なく言った 「お前どうせ暇なんだろ?用事を済ませた後でいいから俺の部屋に来い。話がある」 「どうせってなんだよどうせって!悪かったな暇人で」 近藤さんの部屋を後にし歩いていると、確か…使われていなかったはずの部屋の円窓からひょっこりと見知らぬ人間が顔を覗かせている。きょろきょろと辺りを見回し、小さな声で「あのー…」と誰かを呼んでいる。多分……あれは困っている。 俺は…… 声をかける 無視する そうだ、俺は困っている人間を放っておけないタチだ。理由くらい聞いてやってもいいんじゃないか? 俺はそいつに話しかけた 「……おい、どうしたんだ?」 「あの、どなたかいらっしゃらないんですか?厠に行きたいのですが…」 「それくらいなら俺が連れてってやるよ」 「監視がつかないと部屋から出られないからって…お前馬鹿だなー!その間に逃げることができたのに」 「それもそうですけど…新選組の皆さんは、父様を一緒に探してくれると言ってくださいました。だからそんなことはしたくなかったんです」 「お前…根がいいやつなんだろうな」 部屋に閉じ込められ軟禁状態のうえオマケに朝昼晩の監視付きだ。俺だったらすぐに耐えられなくなりねをあげているだろう 俺は呆れを通り越して感動を覚えた。 「そういえばまだ聞いてなかったが名前は?」 「雪村千鶴と申します」 「そうか、あんたが綱道さんの……………ってええ!?」 予想は大外れだ!全然似てないじゃないか!! 本人の顔見て思いっきり笑いとばそうと思ってたのにな! 「えっと…何か?」 俺はこいつの顔をまじまじと見つめる。やっぱり似てない。母親寄りってことか? それから目線は自然と下にいく 「…あんた本当は嘘ついてるんじゃないか?」 「え!?どーゆうことですか!?」 だってどっからどーみても…コイツ男じゃないか 俺は声量を落として雪村に耳打ちした 「どうしても娘と偽らなきゃならない理由があったんだろ?土方さんには黙っといてやるから…」 「………」 「俺がどうかしたって?」 「げ!!!!土方さん!」 「遅ぇとは思ってたがこんなところで油売ってやがったのか」 俺を睨み付けたあと隣に冷たい視線を寄越した 「なんでそいつを部屋から出してる。誰の許可だ」 雪村はびくりと肩を震わせ無意識にか俺の着物の裾を掴んでいる 「すみません、私が…」 「コイツが厠に行きたいっつーから案内してやったんだ。今から部屋に戻るところだからそうピリピリすんなよ」 すると土方さんは大げさなため息をついてから「アイツら見張りはどうしたんだよ」と頭を抱えた。 「今回は許す。が次からは俺の許可無しの行動は慎め」 「毎回毎回厠つれてくだけで許可貰いに行かなきゃならないのか!?」 冗談だよな、と俺は半分笑い飛ばしたが土方さんの目は本気だった。 「それから…話ってのが」 土方さんは俺を自分の肩口まで引き寄せるとばつの悪そうな顔をしながら耳元でぼそぼそと話した。 「空いてる時間でいいからアイツの相手してやってくれねえか?」 「俺がか?そんなの他の隊士にさせればいいだろ」 「つきっきりで監視やってんだ。不良みたいな顔付きしてやがるアイツらよりも犬みてぇな顔してる井吹の方が気が楽だろ」 「犬みたいな顔ってなんだよ!」 「ばっ…静かにしやがれ!それじゃあ頼んだぞ」 なんだかんだでコイツのことを心配してるんだろーが、俺の顔を遠回しに馬鹿にするとは流石土方さんだ 俺は雪村に向き直すと改めて名乗った 「俺は井吹龍之介だ。また困ったことがあれば言ってくれ」 「はい、井吹さん」 「さんは気持ち悪いな…あ、実は女じゃないってことは誰にもばらさないから安心しろよ」 「……………はい、井吹君」 nextあとがき [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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