ネウロ
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▽breaking heart
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夕方のラッシュの時間帯、兄貴と街をぶらついていると横断歩道の先に見覚えのある少女の姿があった。
俺は気付かぬフリをして先へ進もうとするとすでに隣に兄貴の影は無かった。

「やぁ探偵さん、
今から事務所かい?」

「こんにちは!いえ、今日はたまの休みなんでちょっと買い物してきたところなんです」

「ほーう、ご一緒してもいいかな」
「はい、いいですよ♪」


「…………」
俺は兄貴を引っ張った。

「本当かよ!?なんでこんな化物に付き合わなきゃなんねー…」

…兄貴が無言でサングラス越しに何かを訴えてくる。これはきっと兄貴なりの考えがあるに違いない。

俺らがアイコンタクトを図っていると横から探偵が顔を突っ込んできた。
「どーしたんですか?」


すると兄貴はパッと表情を変え探偵の方へ体を向けた。

「いや、なんでもない。それよりその荷物が重そうだな、持ってあげよう」

「そんな、気なんて使わなくても…」

「いいんだ。君には無理させたくない」


………兄貴?

「本当に?それじゃあお言葉に甘えて…」

「フフ」

ア・ニ・キィィィイイ!
何顔ほのかに染めて笑ってんだよ!
なんだこれ、スゲー腹立つ。嫉妬心が渦巻く。


俺は兄貴の手へ渡されかけていた買い物袋を探偵から奪い取った。

「お、俺が持ってやるよ
このくらい」

いや全然このくらいのレベルの重さではない。袋に目をやるとギチギチに食料品が詰め込まれている。
…これ一人で食うのか?

「なんか悪いですね…ありがとうございます」

「あぁ」


すると兄貴が「チッ」と舌打ちをした。
探偵は気付いていないのか、構わず俺に爆弾を投下した。

「ユキさんって意外と優しいんですね」

「…はぁ!?」
いや、素直に嬉しい。
だが俺に絶えず降り注ぐ殺気と威圧感。

「ばーか、そんなんじゃねーよ…」

全身から嫌な汗が滲み出る。チラリと兄貴の方に目をやると口の両端を吊り上げクツクツと笑っている。…否、表情が顔半分崩れている。


「見た目によらないもんですね♪」

「…おう」

おぃぃいっ…俺が、俺が兄貴に嫌われんだろ、よせ、もう俺に構うな…



「だ、そうだよ?」
兄貴に肩を掴まれた。ギリギリと力が込められる。

「…くだらないよな…なぁ、兄貴?」

兄貴の顔が、笑っていない。
「あぁ、実にくだらないな…。

さぁ、探偵さん。ユキのことは放っておいてあの店に寄ってみようか。今日は特別に奢ってくれるそうだ」

「そうだって…誰が…?」
「ユキが」


…確実に俺は一文無しになる。そして兄貴に嫌われた…

俺は崩壊しそうな涙腺を必死に堪えながら兄貴に耳打ちした。


「なんで、俺が…?」


「フフ、今借りを作っておけば後々得をするのは我々だ」

「…でも…」


「それにユキ。探偵にあんなこと言われて嬉しいだろう?奢ってやりたいんだろう?」


兄貴の笑顔が痛い。ぐさぐさと全身に突き刺さる。

「それに自分から誘っておいてはなんだが…今は金を持ち合わせていなくてねぇ」



それって兄貴が探偵とお茶したかっただけかよぉっ…!

よぉ、よぉ、ょぉ………



暮れ始めた街に叫び声がこだました。











end.
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