1/1ページ目 青春学園男子テニス部部長の手塚国光と、一年生レギュラーの越前リョーマは、互いに一目惚れをし、ごく自然に付き合い始めた。 誰にも秘密の恋人同士…なのだが、実は、殆どの部員は二人の関係に気が付いている。 それをネタにからかうような度胸の持ち主は、レギュラーを除いて他にはいない。 それでも、手塚に何かを仕掛けることは出来ず、もっぱらリョーマが絡まれている。 そしてその日も、リョーマは菊丸に付き纏われていた。 「な〜ってば〜おチビ〜〜」 「ヤです」 リョーマから何かを聞き出そうと、菊丸がしきりに話しかけている。 それに鬱陶しそうに、リョーマが一応、返事をしている。 「えーいいじゃん、ちびっとでもいいからさ〜〜」 何を聞き出したいのか、菊丸はしつこく付きまとっているが、リョーマは返事も面倒になったのか、無視をしてスタスタと歩いてゆく。 「くっそ〜あくまでも無視するつもりだにゃ。そういう奴にはこうにゃ!」 言って、菊丸がリョーマに飛びかかる。 …飛びかかろうとしたが、ちょうど側にいた手塚の前に回り込んで、それを避ける。 「うわっ!」 目標を見失い、空振りとなった菊丸は、その勢いのまま手塚の背を思いきり押す事になってしまった。 「!」 練習メニューを確認していた手塚は、菊丸の不意打ちにバランスを崩してしまった。 「部長!」 咄嗟にリョーマが手を差し出すが、小柄なリョーマに手塚が支えられるはずもなく、リョーマもろとも倒れこむ。 「手塚!越前!」 レギュラーが慌てて駆け寄る。 リョーマが下敷きに…と思ったが、下敷きになったのは手塚の方だった。 バランスを崩して倒れこむ瞬間、リョーマを抱き込み、身体を反転させて手塚が下敷きになったのだった。 人間離れした身体能力を発揮したのは、相手がリョーマだったからかもしれない。 「大丈夫か?越前」 「俺は部長が庇ってくれたから…部長は?」 「俺は大丈夫だ。何ともない」 確認しあって顔を見合わせた二人は、何故か顔を赤くしていた。 そして、その横で菊丸がポカンと口を開けて二人に目を向けている。 「何かあったのか?英二」 大石が菊丸に声をかける。 「て…」 「て?」 「手塚とおチビが…チューした――!!」 「え?」 菊丸の叫びに、手塚とリョーマが更に顔を赤くする。 「どういうことなんだ?」 ノート片手に楽しげに訊いてくるのは、乾。 「手塚がおチビ抱えて反転した時、口があたって、しっかり重なってた」 「ほう…しかも、二人の様子からして、これがファーストキスってことか」 「乾!」 「乾先輩!」 二人が揃って乾を睨みつけたことで、乾の言葉を肯定している。 それを見て、乾が嬉々としてノートに何かを書き込んだ。 「………」 「………」 「…部長」 「何だ?」 「ちょっと来て下さい」 言って、手塚の手を引っ張る。 「…わかった」 答えて、乾と大石に顔を向ける。 「少し抜ける。練習を始めておけ」 そう言い置いて、二人はコートを出て行った。 リョーマが手塚を引っ張って行ったのは、コートから校舎に向かう途中にある木立の奥、コートからも校舎からも死角になる場所だった。 辺りに人がいないのを確認して、リョーマは手塚に抱きついた。 「何か…くやしい」 「リョーマ?」 「ファーストキスが、あんな…」 リョーマの言いたい事が解って、手塚がリョーマの頭を撫でる。 「そうだな」 リョーマだけでなく、手塚も同じ気持ちだった。 だからこそ、すっと言葉が出てきた。 「やり直すか?」 言って、リョーマの顔を上げさせる。 「あんな事故のキスではなく、恋人のキスを」 手塚からのそんな言葉に、リョーマは驚いた顔をしたが、静かに目を閉じた。 リョーマを抱き寄せ、口づける。 啄むようなキスを、角度を変えて繰り返し、しっとりと重ね合わせる。 「あ…」 一度離れると、リョーマの口から吐息混じりの小さな声が漏れた。 リョーマの腰と頭に手を添えてしっかりと支えると、もう一度重ね、薄く開いた唇から舌を挿し入れる。 口内を蹂躙されて、身体の力が入らないリョーマは、縋るように手塚の背に腕を回した。 事故のキスのおかげで、思いがけず交わす事になった初めての恋人のキスは濃厚で、帰りの遅い二人を大石が探しにくるまで続けられたのだった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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