小説(テニスの王子様)

今日は何の日?
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 部室で、椅子に座って練習メニューの確認をしていた手塚は、人の気配に顔を上げた。
「ねぇ、手塚、今日は何の日か知っている?」
「不二か。…いや、知らんな」
「じゃ、教えてあげるよ」
 言いながら、いつもの笑みを浮かべて不二が近付いてくる。
「今日は…」
 顔が至近距離まで近づいたその時、
 バァン!と扉を壊す勢いで部室のドアが開けられ、小柄な人物が駆け込んできた。
「させないっスよ!不二先輩!」
 駆けこんできたのはリョーマで、二人の間に割り込んで、不二を手塚から遠ざける。
「…あれをかわして来たんだ」
「あんなのじゃ、ムリっす」
 そうリョーマが言った時、あんなの呼ばわりされた面々が部室に入ってきた。
「おチビ〜〜〜〜」
「え、えちぜ…ん…お前…本気で逃げんな…」
 菊丸、桃城、その後ろに二年の部員達。皆、息を切らして今にも倒れそうになっている。
 菊丸達は、不二に頼まれてリョーマを足止めしようとしていたのだが、部内1位の俊足の持ち主に本気で逃げられればどうしようもなかった。
「まだまだ、だね」
 いつもの台詞で更に落ち込ませると、その光景を珍しく呆然と見ていた手塚の方を向いて、不二と同じように顔を近づけ、唇を重ねた。
「!」
 それを見た部員達が驚愕するが、疲れ果てて声は出ない。
「あーあ、残念」
「部長にキスしていいのは、俺だけっス!」
 そう言って、もう一度キスをする。
「越前、何故キスをするんだ?」
「そんなの、部長が好きだからに決まってるでしょ。だから、部長にキスしていいのは俺だけ」
 無理矢理な理屈だが、何故だか手塚は納得してしまった。
「では、越前にキスをしてもいいのは俺だけ、ということだな」
「!」
 その言葉に含まれた意味に、リョーマの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「部長、大好き!」
 言って、手塚の膝に座り抱きつく。
「ああ、俺もだ」
 そう答えて、リョーマを抱きしめる。
 キュッと回した腕を強くするリョーマをあやす様に背中をポンポンと叩いて、ふと考える。

(結局、何の日だったんだ?)

 答え、
 5月23日は、キスの日です。

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