1/1ページ目 「キスの日?」 聞き慣れない言葉に、リョーマが首を傾げる。 「そ。日本で初めてキスシーンのある映画が放映された日にゃんだぞ」 「ふーん」 得意げに話す菊丸に対するリョーマの反応は、物凄く淡白なものだった。 「…もうちょっとマシなリアクションしろよ」 がっくりと肩を落としながらもジロリと睨みつけてくる菊丸に、リョーマが溜息をつく。 「日本って、こじつけで何とかの日って付けるの好きッスね」 「そうだね。基本的にお祭り好きだから、便乗して騒ぎたいだけなのかもしれないけど、キスって日本人には神聖なものだからね」 「神聖って…」 不二の言葉にも、少し首を傾げる。 日常的に交わすキスが神聖という意味が、リョーマには解らない。 「部長」 解らないので、とりあえず、部誌を書いている手塚の元に行く。 「何だ?」 リョーマの声に顔を上げた手塚に、リョーマがキスをする。 軽く触れただけだが、頬や額ではなく唇にキスをした。 それを見て、部室に残っていた全員が固まる。 その中で、突然キスをしたリョーマに、平然としているのは一番煩いであろう手塚だった。 「神聖?」 「何のことだ?」 「不二先輩がキスは神聖なものだって言うから…」 それが解らなくて訊いてみた、というリョーマを手塚が抱き寄せる。 「そうだな…毎日している俺達にはそう思えないかもしれないが…」 (ま、毎日??) 手塚の言葉に、固まっている全員の心の声が重なる。 「今はそうでもないが、昔は特別な時にしかキスなんてしなかったからな。そういう意味で神聖なのだと思う」 「そうなんだ。でもそれじゃ、俺達には神聖な行為にはなんないね」 「日常的なキスはそうだが、する前のキスは神聖と言ってもいいのではないか?」 「する前って…」 手塚の言葉の意味はすぐに解って、リョーマが顔を赤くする。 「…そうかも」 愛を確かめ合う前に交わす口づけ。 それは確かに神聖な儀式なのかもしれない。 「だが」 リョーマを更に抱き寄せて 「神聖なキスよりも、日常茶飯事なキスの方がいい」 そう言って、今度は手塚がリョーマにキスをする。 「そうだね。時々しかしないキスより毎日の方がいい」 リョーマが答えて、二人はまたキスをする。 互いの姿しか見えていない二人の頭からは、部員の存在は消え去っていた。 「部誌を出してくるから、少し待っていてくれ」 「それなら、荷物持って一緒に行くよ。そうすれば、そのまま帰れるし」 「それもそうだな」 答えて、ラケットバックを持って立ち上がる。 同じように、リョーマもラケットバックを肩に掛ける。 「明日は休みだし、今日はうちに泊まって神聖なキスをするか?」 「うん、する」 そんな言葉を交わしながら部室を出て行った二人を、部員達は固まったまま見送った。 (今日やるのか?) (ていうか、二人ってそんな関係だったのか!!) 固まって声の出ない部員達は、心の中でツッコミを入れる。 その後、見回りの先生が来るまで、部員達は固まったままだった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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