小説(テニスの王子様)

日常茶飯事
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「キスの日?」
 聞き慣れない言葉に、リョーマが首を傾げる。
「そ。日本で初めてキスシーンのある映画が放映された日にゃんだぞ」
「ふーん」
 得意げに話す菊丸に対するリョーマの反応は、物凄く淡白なものだった。
「…もうちょっとマシなリアクションしろよ」
 がっくりと肩を落としながらもジロリと睨みつけてくる菊丸に、リョーマが溜息をつく。
「日本って、こじつけで何とかの日って付けるの好きッスね」
「そうだね。基本的にお祭り好きだから、便乗して騒ぎたいだけなのかもしれないけど、キスって日本人には神聖なものだからね」
「神聖って…」
 不二の言葉にも、少し首を傾げる。
 日常的に交わすキスが神聖という意味が、リョーマには解らない。
「部長」
 解らないので、とりあえず、部誌を書いている手塚の元に行く。
「何だ?」
 リョーマの声に顔を上げた手塚に、リョーマがキスをする。
 軽く触れただけだが、頬や額ではなく唇にキスをした。
 それを見て、部室に残っていた全員が固まる。
 その中で、突然キスをしたリョーマに、平然としているのは一番煩いであろう手塚だった。
「神聖?」
「何のことだ?」
「不二先輩がキスは神聖なものだって言うから…」
 それが解らなくて訊いてみた、というリョーマを手塚が抱き寄せる。
「そうだな…毎日している俺達にはそう思えないかもしれないが…」
(ま、毎日??)
 手塚の言葉に、固まっている全員の心の声が重なる。
「今はそうでもないが、昔は特別な時にしかキスなんてしなかったからな。そういう意味で神聖なのだと思う」
「そうなんだ。でもそれじゃ、俺達には神聖な行為にはなんないね」
「日常的なキスはそうだが、する前のキスは神聖と言ってもいいのではないか?」
「する前って…」
 手塚の言葉の意味はすぐに解って、リョーマが顔を赤くする。
「…そうかも」
 愛を確かめ合う前に交わす口づけ。
 それは確かに神聖な儀式なのかもしれない。
「だが」
 リョーマを更に抱き寄せて
「神聖なキスよりも、日常茶飯事なキスの方がいい」
 そう言って、今度は手塚がリョーマにキスをする。
「そうだね。時々しかしないキスより毎日の方がいい」
 リョーマが答えて、二人はまたキスをする。
 互いの姿しか見えていない二人の頭からは、部員の存在は消え去っていた。
「部誌を出してくるから、少し待っていてくれ」
「それなら、荷物持って一緒に行くよ。そうすれば、そのまま帰れるし」
「それもそうだな」
 答えて、ラケットバックを持って立ち上がる。
 同じように、リョーマもラケットバックを肩に掛ける。
「明日は休みだし、今日はうちに泊まって神聖なキスをするか?」
「うん、する」
 そんな言葉を交わしながら部室を出て行った二人を、部員達は固まったまま見送った。

(今日やるのか?)
(ていうか、二人ってそんな関係だったのか!!)

 固まって声の出ない部員達は、心の中でツッコミを入れる。
 その後、見回りの先生が来るまで、部員達は固まったままだった。

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