1/1ページ目 体を動かせば汗を掻くが、不快な暑さではなく、梅雨の様な湿気もない、比較的過ごしやすい5月。 都大会を優勝で終えた青春学園中等部・男子テニス部は、より一層練習に励んでいた。 土日も当然のように練習があり、それを嫌がるでもなく皆真面目に参加している。 日曜の今日も朝から練習で、昼休憩の後は、ノルマをこなした後は自由な半自主練習となっていた。 「ふぅ…」 部室近くの大きな木の幹に背中を預けて、その根元にリョーマが座り込む。 汗を掻いてはいるが、それほど疲れた様子はなく、帽子を脱いでタオルで軽く汗を拭う。 木陰はコート周辺よりも気温が低く、風が吹き抜けてとても涼しい。 「涼しい…」 呟いて、傍らに置いていた、愛飲している炭酸飲料を口に運ぶ。 炭酸特有の清涼感が体中に沁み渡る。 コートに目を抜けると、ノルマを終えたレギュラーの数人が休憩の為に出てくるところだった。他の部員はノルマの半分、といったところだろうか。 ちなみに、リョーマは一番に終わらせている。 「炭酸はやめろと何度言えば分かるんだ?」 かけられた声に顔を上げると、いつ来たのか、部長の手塚がリョーマの側に立っていた。 普段は生徒会業務と重なる為、最初から参加ということが少ない手塚だが、日曜の今日は最初から参加している。 「今は休憩中」 練習中の水分補給には飲んでないんだからいいでしょ、と手塚の目の前で口に運ぶ。 それを見て、再度注意するでなく、手塚は苦笑する。 「部長、ノルマは?」 「終わらせたからここにいるのだろう?お前と同じだ」 その言葉に、リョーマが笑う。 「だったら、監督するみたいに立ってないで座れば?」 「…そうだな」 言われて、リョーマの隣に腰を下ろす。 座ると、風が手塚の髪を撫でてゆく。 「ここ、涼しいっしょ」 「ああ」 答えて、手塚がクスリと笑う。 その学校では珍しい表情に、リョーマは一瞬見惚れてしまった。 「な、何、笑ってるんすか」 それを誤魔化すように、リョーマがぶっきらぼうに言う。 「ん?ああ、猫は居心地の良い場所を知っているものだと思ってな」 「…何すか、それ」 「猫だろう?お前は」 言って、また笑う。 「特定の相手にだけ、気まぐれに甘えてくる猫だ」 「………」 その言葉に、リョーマの顔が赤くなる。 それに気付かないフリで、手塚もコートに目を向けて、小さく息を吐いた。 「…疲れてる?」 「生徒会が忙しい時に大会が重なったからな」 と、手塚が肯定する。 「ふーん、珍しいじゃん、あんたが疲れたって認めるの」 「かもな」 本当に珍しい言葉に、リョーマが手塚の方に顔を向けた時、不意に名を呼ばれた。 「リョーマ」 部活中には決して呼ばない名に、リョーマが驚いた顔をする。 「炭酸を飲んでいたことを見逃してやるから、少しの間枕になってくれ」 「え?」 言うと、リョーマが答えるより早く体を倒し、リョーマの足に頭を乗せた。 「え、え?」 (これって、膝枕…だよね?) 突然のことに硬直したリョーマに構わず、横になった手塚は目を閉じた。 眠っている訳ではないが、その表情はとてもリラックスしているように見える。 そんな手塚を見て、リョーマも体の力を抜いた。 手塚の頭に手を伸ばし、そっと髪を梳く。 なんだか擽ったいけれど、なんだか幸せで… 手塚の大きさに比べると、まだまだな自分の側で安らいでくれるのが嬉しい。 (風は気持ちいいし、ジュースは美味しいし、国光がいるし、なんか幸せだな) チラッと手塚の顔を見て微笑んで、リョーマも目を閉じた。 練習再開までの短い時間の幸福に浸るために… [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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