小説(テニスの王子様)

※俺のもの
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 その日の部活は、委員会等で遅れる者もなく、欠席者もいない、珍しく開始時から全員が揃っていた。
 全部員が揃っていれば、それなりにざわめいているのだが、なぜだか今日はとても静かだった。
 その原因は、部長の手塚国光。
「………」
「………」
「………」
 一部の者を除き、あんぐりと口をあけて手塚を見ている。
 手塚は、普段通りの厳しい表情で、集合をかけた後は練習メニューを言い渡し、いつもと変わらない。
 だが、いつもとは違う。
 明らかに違う点があるのだが、誰もそれを指摘することが出来ずにいる。
「どうした、練習を始めろ」
 練習が始まったにもかかわらず、誰ひとり動こうとしないことに訝しげに声をかける。
 その声に、ようやく呪縛の解けた一人が声を出す。
「手塚…それ、何?」
 ようやく言葉を発したのは、不二。
 手塚の背後を指さして、訊いた。
 いつもとは違う点、それは、手塚の背中に何かが張り付いているということ。
「越前だ」
 不二の問いに、淡々と答える。
 手塚に張り付いているのは、青学男子テニス部最強ルーキーの越前リョーマ。
「いや、それは解ってるけど、どうして、そういう状況になってる訳?」
 リョーマは、手塚のお腹に腕を回して抱きつき、背中にぴったりとくっついている。
「俺は越前のものだそうだからな」
「…え」
 返ってきた、有り得ない言葉に、不二が固まってしまう。
 それだけでなく、微かに笑んでいるように見える。
「それ…邪魔じゃないの?」
「邪魔な訳がないだろう」
 不二がリョーマを指さして訊けば、即答された。
「…一体、どうしたんだ?手塚」
 普段の手塚では有り得ないことを即答されて、言葉が出なくなってしまった不二に変わり、大石が訊いてくる。
「手塚は…昼休みに女生徒に告白された」
 大石の問いに対して手塚が答えるよりも先に、別の者が口を開いた。
「乾…それが何か関係あるのか?」
「手塚は当然、断ったが…その女生徒は去り際に手塚にキスをして、それを越前が見てしまった…ということだ」
「ああ…」
 それを聞いて、レギュラー陣は納得してしまった。
 レギュラーはそれで良くても、その他の部員はそうはいかない。
「おい、越前!いい加減に部長から離れろ!」
 ようやく復活した荒井がリョーマを引きはがそうとするが、手塚から腕を離したリョーマはそのまま前に回り、抱きついた。
「国光は、俺の!」
「お前、部長を呼び捨てに!!…部長からも何か言って下さい!」
 手塚の横で喚いている荒井をチラリと見て、
「可愛いだろう?」
 と、リョーマに注意ではなく、荒井に言った。
「…え」
 その言葉に、荒井が真っ白になって固まる。
 言った後、手塚はリョーマの頭をポンポンと軽く叩いて、腰に腕を回した。
「リョーマ」
 手塚が名を呼ぶと、リョーマが顔を上げる。
「…国光、消毒」
 言って、背伸びして目を閉じる。
「わかった」
 短く答えると、手塚は身を屈めてリョーマに口づけた。
 角度を変えて何度か口づけた後、ようやく離れる。
「今日はずっと俺の相手して」
「ああ。ついでに、今日はうちに来い」
 その言葉に、リョーマの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「では、始めるか」
「うん!」
 二人は仲睦まじく、コートに入っていった。
 それを見た荒井は、燃え尽きて灰になってしまっている。
「あー…今日はお持ち帰りなんすね」
 桃城がボソリと呟く。
「余計なこと言ってねぇで、さっさと練習始めろ」
 言いながら、桃城の前を横切っていった海堂の言葉に、他のレギュラーも動き出す。
「そうだな、練習しよう」
 大きな溜息をついて言うのは、大石。
「こいつら邪魔だけど、どうする?」
 コート上に固まっている数人の部員を指さして、乾が言った。
「端っこに転がしとくにゃ」
「そうだな」
 菊丸の言葉に、レギュラーが邪魔な部員を邪魔にならない場所に運んで転がして、何事もなかったかのように練習を始めた。

 一連の出来事で、レギュラー以外の部員達も知ってしまった。
 手塚とリョーマが恋人同士であることを…
 部員達の眼に映る二人は楽しそうにラリーをしているが、その周りにはピンクのハートが飛び交っていた。


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